2022.09.08

パルプマガジンみたいに薄っぺらいコラム


親愛なる友だちへ、ひねもです。


やっとザ・バンドの映画を観た。


ザ・バンド かつて僕らは兄弟だった

2019年公開。

ギタリストのロビーロバートソンの自伝が元になってるのかな?

知らない事もたくさんあって観れてよかった。


全体的な内容としてはロビー自身による自分讃歌で

私生活がメチャクチャなメンバーをまとめてしかも家族も守りつつ俺はめっちゃ曲書いて頑張ったぜ!俺すげーだろ!?

といった感じで手放しに良いねーとは思えなかった。


ロビー以外はガースしか存命じゃないので、死人に口なしじゃないけど自分に都合よくやってるなあと。。


知らなかったエピソードは元々はロニーホーキンスはゴリゴリのロカビリーミュージシャンだった事とか。
ラストワルツのイメージが強いから意外だった。最初からカントリーやR&Bの土着系ミュージシャンだと思っていた。

中学生のときこのハットの曲がり方にとても憧れた。いや今でも憧れてる。
まぁ時代的にはロックンロール=ロカビリーしかないのだから自然な事なのか。

というかロニーホーキンスってめちゃかっこいいけど逆説的知名度というか、後のザ・バンドがバックバンドにいたから有名ってところもありますよね。

見出した側だけど失礼ですが御本人はあまり知名度ないような。

この人をフェイバリットに挙げる人を今まで見た事がないし。。かっこいいのに。





キッズのロビーがハーモニーのギターを愛用していて可愛かった。
当時のスチューデントモデルなのかな。

ハーモニーやシルバートーン、ダンエレクトロとかの50sギターはルックスが可愛くてたまらない。

いつかセカンドギターとして欲しい。



あとエリッククラプトンがクリーム解散後にザ・バンドに入れて欲しくてギター担いでスタジオに訪ねていったけど断られたこと。

セッションすらも頑なに拒絶されたとか。

これは全く知らなかった!


彼らは兄弟的絆で繋がってるからバックバンドを引き受けたりはするけど、よそ者がザ・バンドのメンバーには入れないのね。当時の状況では。


で、セッションをやらないのは”彼らは曲作りチームだから”ってクラプトンが言っててなるほどな〜と思った。


音楽やった事ない人にはなんのこっちゃだと思うのですが、料理に例えて説明すると


セッションしながら曲作りをするというのは、何を作るか決めずにやっていくという事なのです。


例えばフミくんがなんとなく玉ねぎをみじん切りにし始めたら、それを見た僕が豚肉に塩胡椒をし、ソウさんがお湯を沸かしてくれて、ガクちゃんが走って裏の畑にハーブを摘みにいくみたいな。

各々が自分が思うこと出来ることを行き当たりばったりにやり始める。


この時点では誰も何を作っているかはわからないということなのです。ゴールが決まっていない。



メインはおそらく豚肉になるだろうけどそれを焼くのか、または叩いて玉ねぎみじん切りと捏ねるのか、お湯に入れて煮るのか、そういう事は全く決まっていないのです。

その中で良かった部分を拾い集めていく。

料理だと後戻りは出来ないけど、音楽だと頭からやり直せるので過程で良かったものをピックアップしていく。




まぁ僕もセッションで曲が出来た事がないのであまりよくわかりませんが、たぶんこんな感じ。



ザ・バンドがやってるのはある程度の形になってる楽曲を誰かが持ってきてそれをアレンジしていく作業。



料理でいうと”豚の生姜焼き”を作ろうと誰かがメインテーマを持ち寄る。

そうするとメンバー全員でじゃあ豚肉はバラなのかロースなのかとかをテストしていくわけです。



玉ねぎは何ミリにスライスするとか。

タレの配分とか。焼き加減とか。付け合わせはどうするかとか。

ここの突き詰め方がめちゃ深い。

週6-7日(毎日じゃん!!)朝から晩までどうしたらより良くなるかをひたすらテストしまくるという。

求道者なのです。


ビッグピンクと呼ばれる田舎の森の中にある自前の地下室スタジオでメンバー全員でああでもないこうでもないと楽曲をいじくりまくるというわけです。


そしてこれしかないというアレンジを練り上げる。

“アメリカで唯一ビートルズに匹敵するバンド”と呼ばれる由縁がここにある。

アルバムや楽曲の完成度がめちゃ高いのです。
あと全員が色んな楽器ができて複数人がメインボーカルをできるところもすごい。



で、セッションバンドではないから遊びというか余白部分はあまり無くてそこもビートルズっぽいのかな。

僕はビートルズをよく知らないのでわからないけど、たぶんビートルズやザ・バンドは急にギターソロを延々と弾き出したり、日によってリズムを大幅に変えたりとかイレギュラーなことはほとんどしないはず。


映画の中でメンバーが1人病欠したときはボロボロのライブだったと言っていたし。

磨き上げて入念な準備をしたものを披露するタイプのミュージシャン。


僕もセッションではなくある程度形にした楽曲を持っていってメンバーとアレンジしていくタイプなので共感できる。

ただ僕はブルースの大きな魅力のひとつである”余白”をいかに作るかもコダワリとしてある。場の空気も大事にしたいというか。






でザ・バンドのビッグピンクに話しを戻すと人里離れたスタジオでメンバーと篭って作業してるから、すごい独特のフィーリングなのです。

世の中はヒッピー、サイケデリックブームの中で男五人で田舎の地下室で毎日朝から晩までアメリカンルーツミュージック探求をしている超変態なわけです。しかもドラムス以外はカナダ人(!!)



そして出来たのはノスタルジックでどこかで聞いたことあるような、しかしどこにもない音楽。まるでおとぎ話のような。

運命共同体だからこそ生まれたスタイル。それによって名曲”ザ・ウェイト”が出来上がる瞬間は振り返りインタビューでも鳥肌ものでした。



その後は色々活躍したけれどこの時代お決まりの酒&ドラッグとかの私生活問題やお金の話しで揉めて破滅していくという。

メンバーとの不仲はやはり見ていて辛い。


メンバーとしてはあんなにスタジオ入って一緒にアレンジを考えたんだからみんなの曲だろ!って思ってるのにロビーが好き勝手やってるように見えたのかな。

ここに関しては片方の意見だけ見ても何もわからないのでノーコメントで。


あとはプロデューサーからこんな山奥の田舎にいたんじゃダメだ!カリフォルニアに引っ越せよ!と言われて、カリフォルニアに引っ越して海がある!ここは最高だ!みたいな場面はちょっと笑ってしまった。

アメリカの地理感覚ないから全然わからないけれど日本だと群馬とか長野の山里に住んでるイメージなのかな?

現代ならネットとかあるけど1960年代で第一線で活躍するミュージシャンとしては色々と不便だっただろうな。

だからこそあの音楽が生まれたのだろうけど。


あと60年代半ばのボブディランが最強にカッコよかった。

エレキVSアコギでちゃんと対立してる時代。

ボブディランがエレキ持ってステージ上がったら大ブーイングってあの頃にずっとバックバンドやってたのがザ・バンド。

だからたくさん映像が流れるんだけど若い頃が超尖ってて良かった。今も難解な人ではあるけど。。
ギターの位置がバタヤン並みに高くてかっちょいい。

アコギからただエレキに持ち替えただけだぜ?それがどうしたんだ?ってことだよね。

ファッションもかっこいいし、どの場面でもずーっとタバコ吸っててそれもかっこよかった。



以上、映画を観た話しでした。

興味ある方は是非!


ザ・バンドが動く姿が見たい方は解散ライブをまとめた映画”ラストワルツ”は一度は見ていて損はないと思います。

ボブディランをはじめ、クラプトンやヴァンモリスン、ジョニミッチェル、ニールヤングやら豪華ゲスト盛り沢山で最初から最後まで素晴らしいです。

僕は家に8ミリビデオテープ(わかる人いるのかな?)があって中学生の頃に何度も見ました。

ドクタージョンもこの映画で知った。ひねもすのROLL AND LIVEの元ネタはこれのWho do you loveだったり。


スワンプ、ルーツ、R&Bとか今でも好きで大事にしてるものはほとんどザ・バンドから教わった。





あとはマディウォーターズは必見。

正直なところ13歳くらいの僕はそのディープなブルースのカッコよさがよくわからなかった。今はちゃんとわかるけど。



この映像の奇跡的な点はいくつかあって、

まずはスタッフが不手際で飛行機のチケットが取れてなくて、しかも調べたらそもそも予算にすら入ってなかったという超失礼。

さらにライブの尺的にゲスト多すぎるから、オファー受けてもらった後だけど誰か削らなきゃってことでマディを外そうとした。ライブ2日前に。

ドラムスのリヴォンヘルムがブチ切れてそれならおれは出ない!って言い出してなんとか出演する方向に。



チケット取ってなかった上に呼んでおいて外そうとするって意味不明過ぎて驚きだ。


さらにさらに当日いざライブが始まると、なんとなぜかマディのライブ中が全カメラのテープチェンジのタイミングに充てられていて誰も撮影していなかった。

ここまでくるとわざとなのか?と疑いたくもなってしまう。



なら映像ないはずじゃん!となるところがたまたま監督が指示を出す声がうるさくてイヤフォンを外して撮影していたカメラマンがいて奇跡的に録画されていた。

ナイスカメラマン!

そのためずっとワンカメラで左からのマディのアップだけのちょっと変わった映像になっている。

最後の最後だけテープチェンジが終わったカメラが右方向からも撮影した映像がちょっとだけ入る。



そのエピソード込みで見るとまたより一層かっこよく感じる。






ブラザーシスター、森の奥のおとぎ話を覗いてみよう!


ラストワルツでのマディウォーターズ



初期ロニーホーキンス



ザ ・バンド(ザ・ホークス)を従えたエレキを抱えたボブディラン。リヴォンヘルムは出る度にブーイングを受けるのが嫌で脱退した時期。



ビッグピンクでの大名曲”ザ・ウェイト”


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